技術コラム Vol.27

NXP i.MX RT クロスオーバーMCUの概要

開発部 エンジニア / 高木

公開日:2025/06/20

今回ご紹介する「i.MX RTシリーズ クロスオーバーMCU」は、オランダのNXP Semiconductors(以下、NXP)社の製品です。 Arm® Cortex®-Mコアとフラッシュメモリを内蔵し、リアルタイム制御機能に対応したさまざまな周辺機能を統合した汎用マイコンです。 モータ制御や液晶表示に対応したミドルレンジから超低消費電力の小型IoT向けのローエンドまで、幅広い用途に対応しています。

当社は、2025年6月にi.MX RTシリーズ「i.MX RT1062」「i.MX RT1021」と、同じくNXP社のMCXシリーズ「MCX N947」を採用したCPUボードをリリースしました。

今回はこれらのMCUを中心に、仕様概要とソフトウェア開発環境の概要について解説します。

  1. NXP CPUボードの概要
  2. 開発環境の紹介
  3. まとめ

1. NXP CPUボードの概要

(1)NX-RT1062の概要

NX-RT1062
NX-RT1062

NX-RT1062は、i.MX RTシリーズ「i.MX RT1062」を搭載した汎用CPUボードです。i.MX RT1062は、最大周波数528MHzで動作するCortex-M7を搭載したミッドレンジのマイクロコントローラです。

<NX-RT1062の特長>

  • 大容量メモリを搭載
    内蔵ROM 128KByte、内蔵RAM 1MByte、SDRAM 32MByte、QSPI FLASH 16MByte
  • 拡張性の高いインタフェース
    10/100BASE-T Ethernet、USB2.0 Host/Function、CANなど
  • LCDインタフェースを搭載
    RGB565パラレル出力とタッチパネルに対応したLCDインタフェースコネクタを搭載
  • オーディオ入出力を搭載
    8K~48Kサンプリングに対応するStereo Audio Codecを搭載
  • CAN通信用コネクタを搭載
    CAN I/Fコネクタを3ch搭載(CAN FD対応1ch)
  • Pmodインタフェースコネクタを搭載
    Pmodコネクタを搭載
  • 対応OS
    FreeRTOS

(2)NX-RT1021の概要

NX-RT1021
NX-RT1021

NX-RT1021は、i.MX RTシリーズ「i.MX RT1021」を搭載した汎用CPUボードです。i.MX RT1021は、最大周波数396MHzで動作する Cortex-M7を搭載したローエンドのマイクロコントローラです。

<NX-RT1021の特長>

  • 内蔵メモリと外部メモリ
    内蔵ROM 96KByte、内蔵RAM 256KByte、QSPI FLASH 4MByte
  • 周辺インタフェース
    USB2.0 Function、CANなど
  • CAN通信用コネクタを搭載
    CAN I/Fコネクタを2ch搭載
  • Pmodインタフェースコネクタを搭載
    Pmodコネクタを搭載
  • 対応OS
    FreeRTOS

(3)NX-N947の概要

NX-N947
NX-N947

NX-N947は、MCXシリーズ「MCX N947」を搭載したAI機能搭載汎用CPUボードです。MCX N947は、最大周波数150MHzで動作するデュアル高性能Arm Cortex-M33と統合型eIQ Neutron Processing Unit(NPU)を搭載し、CPUコアのみの場合と比較して最大42倍の機械学習スループットを実現しています。

<NX-N947の特長>

  • 大容量メモリを搭載
    内蔵FLASH 2MByte、内蔵RAM 512KByte、QSPI PSRAM 8MByte、QSPI FLASH 4MByte
  • 拡張性の高いインタフェース
    10/100BASE-T Ethernet、USB2.0 Host/Function、CANなど
  • オーディオ入出力を搭載
    8K~48Kサンプリングに対応するStereo Audio Codecを搭載
  • CAN通信用コネクタを装備
    CAN I/F(CAN FD対応)コネクタを2ch搭載
  • 対応OS
    FreeRTOS

(4)サンプルプログラムの概要

当社の「NX-RT1062」「NX-RT1021」「NX-N947」では、各CPUボードで動作する以下のサンプルプログラムを提供しています。

  • 汎用インタフェース用サンプルプログラム(NX-RT1062、NX-RT1021、NX-N947)
  • Pmod用サンプルプログラム(NX-RT1062、NX-RT1021)
  • LCD-KIT用サンプルプログラム(NX-RT1062)
  • NPUを使用した画像分類サンプルプログラム(NX-N947)

各サンプルプログラムは、NXP社が無償で公開している開発環境「MCUXpresso IDE(コンパイラはGCC)」を使用しており、CPUボードのほかにデバッガをご用意いただければ、すぐに動作を確認できます。サンプルプログラムの詳細は、各CPUボードの製品ページにあるサンプルプログラム解説書をご確認ください。

また、サンプルプログラムの使い方として、チュートリアル資料「AN2301 NXシリーズ開発チュートリアル」も用意しています。CPUボードのハードウェアマニュアル、およびサンプルプログラム解説書は、CPUボードをご購入前でも閲覧できますので、ぜひご一読ください。

2. 開発環境の紹介

NXPマイコンの開発を始める場合、以下の機材とソフトウェアを用意する必要があります。

  • 統合開発環境(エディタ、コンパイラ、デバッガ)
  • OS、ソフトウェア、ドライバなど
  • フラッシュ書き込みソフト
  • JTAGエミュレータ
  • CPUボード(ターゲットボード)
  • Windows PC

NXPマイコンのソフトウェア開発環境はNXP社から提供される開発環境のほか、各サードパーティの開発環境も利用できます。

今回は、NXP社より無償で提供されている統合開発環境「MCUXpresso IDE」をご紹介いたします。

(1)統合開発環境「MCUXpresso IDE」の概要

「MCUXpresso IDE」は、Eclipseベースの統合開発環境で、エディタ、コンパイラ(GNU C)、デバッガなど、NXPマイコンのソフトウェア開発に必要な機能がすべて含まれています。各MCUに対応したソフトウェア開発キット「MCUXpresso SDK」をインストールすることで、ミドルウェアやドライバのインポートが行えます。

また、同社が提供するツール「MCUXpresso-Config-Tools」と連携することで、クロック、ピンアサインの設定など、ソフトウェアの開発をより効率化できます。

(2)ソフトウェア開発キット「MCUXpresso SDK」の概要

「MCUXpresso SDK」は、NXPマイコンの組込みシステムを開発するためのソフトウェアパッケージです。RTOSおよびドライバやミドルウェアなど、NXPマイコンの開発に必要なソフトウェアを利用できます。

「MCUXpresso SDK」の構成イメージは、以下のようになっています。

MCUXpresso SDKブロック図

「MCUXpresso SDK」には、NXPマイコンの内蔵機能をすぐに利用できるように様々なソフトウェアが用意されています。Real-Time OSとしてFreeRTOSを組込むことができます。また、CPU内蔵機能のドライバと、Ethernet・USBなどのミドルウェアスタック機能など、これらすべてが含まれておりソースコードとして出力できます。

また、各ドライバ、ミドルウェアを使用したサンプルプログラムも用意されています。

(3)フラッシュ書き込みソフト「MCUXpresso Secure Provisioning Tool」の概要

「MCUXpresso Secure Provisioning Tool」は、USB Function、もしくはUARTを使用し、NXPマイコンの内蔵FlashROMや外部に接続されたQSPI FlashROMなどへ書き込みが行えるツールです。

(4)JTAGエミュレータ

プログラムのデバッグにはJTAGエミュレータを使用します。JTAGデバッガやデバッグプローブとも呼ばれます。JTAGエミュレータは、PC側をUSBポートに、マイコン側をJTAG端子(コネクタ)に接続します。

NXPマイコンは、Arm Cortex-Mコアに対応するJTAGエミュレータであれば利用できますが、今回は「MCUXpresso IDE」が対応する製品をご紹介します。

  • MCU-Link Debug Probe

    NXP社純正のJTAGエミュレータです。MCUXpresso IDEとシームレスに連携できるデバッグプローブです。非常に安価で、代理店や電子部品の取り扱いショップなどから3千円程度で購入できます。上位版としてMCU-Link-Pro Debug Probeが発売されています。

  • J-Link

    SEGGER社の汎用JTAGエミュレータです。MCUXpresso IDEに対応しています。また、NXP社以外の各社マイコンにも対応しています。SEGGER社が提供する各種ツールソフトも利用できます。詳しくはSEGGER社の製品情報をご覧ください。

「MCU-Link Debug Probe」と「NX-RT1062」の接続
「MCU-Link Debug Probe」と「NX-RT1062」の接続

[JTAGコネクタについて]
ARMのJTAGコネクタには、20pinや10pinなどコネクタの規格が複数ありますが、当社の NXPマイコン搭載CPUボードは10pinハーフピッチコネクタとなっています。接続ケーブルは各デバッガメーカより提供されていますので、対応ケーブルをご用意ください。

3. まとめ

今回は、「i.MX RTシリーズ クロスオーバーMCU」を中心に、NXP社製マイコンの概要と開発環境についてご紹介いたしました。

NXP社製マイコンの特長として、ミッドレンジからローエンドをカバーしており、開発環境にMCUXpresso IDEを使用することでRTOSやデバイスドライバの実行も比較的簡単に行えます。また、グローバルシェアが高く、情報ソースが多いことも魅力のひとつです。リアルタイム制御用マイコンの選択肢の一つとして加えてみるのはいかがでしょうか。

当社から販売している「NX-RT1062」「NX-RT1021」「NX-N947」の3製品は、ミドルレンジからローエンドまで、用途に合わせてご選択いただけます。また、当社webサイトの各製品ページからサンプルプログラムを提供していますので、より少ない負担で開発を始められます。ぜひ当社のNXP CPUボードをお試しください。

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