技術コラム Vol.35

もう迷わない!エッジAIマイコンの選び方

開発部 エンジニア / 水野

公開日:2026/9/14

ルネサス エレクトロニクス社が展開する人気のCPUファミリ「RA」と「RZ」。最近はエッジAI向けのマイコンとしても注目されていますが、選択肢が多く「AI活用をするときに何を選ぶべきか」迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。

AI対応マイコンを選ぶときは演算性能だけでなく「どこで判断させたいか」「どんなデータを扱うか」「どのくらいの電力で動かしたいか」をセットで考えるのが、最適なデバイス選びのコツです。

このコラムでは「活用例」「性能と消費電力」「開発ツール」という3つのポイントから、両者の違いを分かりやすく整理していきます。

  1. 活用例から見るRA/RZのAI特性
  2. AI処理能力と消費電力で見る位置づけ
  3. 開発をサポートするツール群
  4. 当社CPUボードで始めるAI評価
  5. まとめ
イメージ図

1. 活用例から見るRA/RZのAI特性

AIの用途はとても幅広いですが、RAファミリとRZファミリのターゲットは「どんな入力データを扱うか」「どこで処理を行うか」で選択が分かれます。まずはRAとRZの活用例から見てみましょう。

例としてルネサス エレクトロニクス社では以下のように紹介されています。

RAマイコン RZマイコン
活用例 ・音声認識/キーワード検出
・振動・電流・温度の異常検出
・軽量な人物検知・顔検出
・頭部計数/人物検出
・動物検出
・車線認識
・複数オブジェクト検出

活用例をもとにRAとRZの得意分野をまとめると以下となります。

  • RAの得意分野 : 音声や振動、電流、温度といった一次元の時系列データを処理するのに向いています。異常検知や制御の判断に素早く反映させたい場合におすすめです。また、低フレーム/低解像度の軽い画像処理用途などにも対応できます。
  • RZの得意分野 : カメラの画像や映像を扱うのが得意です。人物や物体の検出、車線認識、外観検査といった、高負荷なAIでしっかりと強みを発揮します。

加えて比較ポイントをまとめると以下のようになります。

比較ポイント RAマイコン RZマイコン
解析データ 音声、振動、電流、温度、軽量な画像 高解像度画像、映像、複数のカメラ
重視する特性 低消費電力、低遅延、リアルタイム性 高いAI処理能力、画像処理、複数入力
想定される製品カテゴリ 小型機器、常時監視、制御機器 スマートカメラ、画像検査、ロボット

必ずしも、RAとRZで用途が限定されるわけではありません。AI性能、必要な手足(周辺機能)のバリエーションなども考慮して選択することも重要です。

2. AI処理能力と消費電力で見る位置づけ

AI対応デバイスを比較する際、つい「GOPS」や「TOPS」(1秒間に実行できる演算量の目安)といったスペック上の数字に注目しがちです。 しかし実際の選定では、ピーク性能だけでなく、モデルの種類や入力サイズ、消費電力、放熱の条件などもあわせて確認することも大切です。

  • GOPS=Giga Operations Per Sec:1秒当たりの演算回数(10億単位)。例)256GOPS=1秒間に2560億回の処理を行う。
  • TOPS=Tera Operations Per Sec:1秒当たりの演算回数(1兆単位)。例)80TOPS=1秒間に80兆回の処理を行う。

では、アーキテクチャの特性などをもとに、縦軸に消費電力、横軸にAI処理性能を取って相対的な位置づけを整理した概念図を見てみましょう。ここではRAとRZの主要なAI対応マイコンをマッピングしています。

位置づけ
  • センサ近傍AI向け(低消費電力重視): 低遅延・低消費電力を重視する領域にはRAが適しています。例えば「RA8P1」は、省電力性を保ちながら軽量なAIシステムを構築したい場合などに適しています。
  • ビジョンAI向け(高負荷処理重視): 画像処理量の多い領域にはRZが適しています。中でも「RZ/V2H」はRZ/Vシリーズの中でも最高性能に位置し、高度な画像AI処理が必要なシステムを構築したい場合などに適しています。

3. 開発をサポートするツール群

AIを組込み機器で実用化するには、アクセラレータや、学習済みモデルをターゲットデバイス向けに変換・最適化するツールも欠かせません。
RA/RZでは、CPUにNPUを搭載することや、AIモデルの最適化をツールで行うことなどで、消費電力を抑えつつエッジAIとしての性能を実現しています。

  • RAファミリ : Arm Cortex-M系のベクトル演算支援「Helium」や、低消費電力な推論を助ける「Ethos-U55 NPU」を活用します。ツールとしては「RUHMI」や「AI Navigator」などを利用します。
  • RZファミリ : 高負荷な画像推論を効率化するアクセラレータ「DRP-AI」や「DRP-AI3」を搭載しています。変換ツールとしては「DRP-AI Translator」や「RZ/V AI SDK」などを利用します。

RAファミリとRZファミリのそれぞれのAI開発フローは以下のようになります。

RA/RZファミリのAI開発フロー

4. 当社CPUボードで始めるAI評価

ここまで活用例や処理能力・消費電力からRA/RZの比較を行ってきましたが、スペック表の数値だけでは「実際のシステムでどの程度動作するのか」イメージが湧きにくい場合もあります。
そこで重要になるのが、実際のデバイスを用いた早期の評価環境です。当社では、最新のAI対応マイコンを搭載したCPUボード製品「AP-RA8P-0A」や「AP-RZV2-0A」などをご用意しており、実機でのプロトタイピングやAI性能の検証をスムーズに進めることが可能です。

AP-RA8P-0A
AP-RA8P-0A
AP-RZV2-0A
AP-RZV2-0A

ボードを活用した実践的な評価手順は、以下のコラムで詳しく解説しております。 本記事と合わせて参考にしてください。

5. まとめ

あらためてRAとRZを比較すると「センサ近くでの軽快・省電力なAI判定ならRA」「画像や映像を駆使するような高負荷なAIならRZ」という大きな傾向が見えてきます。ただし、システム全体としてみた場合、AI性能の数値だけで決めるのではなく、実際のデータや応答時間、電源条件、コストなども含め、総合的に検討することも大切です。

当社のCPUボード製品は、回路図の公開や充実したサンプルプログラム・アプリケーションノートの提供などを通じて、お客様の開発初期コストと期間の大幅な削減に貢献します。
まずは手軽に性能を評価できる「AP-RA8P-0A」や「AP-RZV2-0A」などで、次世代製品への第一歩を踏み出してみませんか?製品の詳細については、お気軽に当社までお問い合わせください。

製品のご案内

本コラムのより詳細な内容については、下記の製品のアプリケーションノートとして、公開しております。アプリケーションノート
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